原発事故から2年4か月、避難者はいま
2013/07/16(火) 11:48 | コラム | 1
「原発再稼働派勝利」でいいか?
参院選は大方の予想通り、自民・公明の与党が過半数獲得の圧勝。民主党は惨敗した。今回の選挙で、「争点」とされたテーマのうち、大切なものと言われたのは、改憲、原発、TPPだったが、世論調査では「反対」が多数を占めた原発については、「再稼働」推進ないし「許容」の党派が多数を占めた。
未だに15万人が自宅に戻れない地域の人々、今なお、一触即発の危険を抱えながら、壊れた施設にも近づけない現場の状況、そこで働く労働者の被曝、10万年レベルで管理しなければならない使用済み核燃料、処理に困る廃棄物…。汚染水が海に流れ出していることも分かった。何をとっても、解決していない東電福島第1原発のいまを考えれば、「再稼働」ということにはならないはずの原発がなぜ、こんなに、推進されているのか?
安倍政権は「成長戦略」に「原発の活用」を入れ、推進に力点を置いている。規制委員会が認めた原発について、「地元自治体の理解が得られるよう最大限努力する」とした。50基に及ぶ全国の原発は、現在は関西電力大飯原発の2基が動いているだけだが、7月8日、新しい規制基準がスタートしたのを受けて、北海道、関西、四国、九州の4電力が6原発12基を再稼働させるための審査を申請した。
民主党政権は「2030年代に原発稼働ゼロ」という目標を掲げた。今回の選挙でも、与党の公明党が「可能な限り速やかに原発ゼロを目指す」とし、日本維新の会も「原発は30年代までにフェードアウトする」としたが、「再稼働」は否定していない。みんなの党は「30年代までに原発ゼロ」、新党大地も「原発ゼロ」だった。再稼働を認めず、脱原発を訴えているのは、共産党、生活の党、社民党、みどりの風。このグループで、議席を増やしたのは、共産党だけだった。
東京選挙区では、毎週官邸前の行動に参加し、脱原発を訴えてきた共産党の吉良佳子さんと無所属の山本太郎さんが当選した。「政治は変えられる。皆さんと一緒に政治を変える」と吉良さんが語り、「当選を喜んでいる状況ではない」と山本さんは語っている。
原爆の危険性、核戦争の危険性を広げるのには「ヒロシマ、ナガサキの実相」を伝えることが大事だった。原発も同じだ。福島の実相を伝え、原発がいかに非人道的、非道徳的であるかを伝えよう。それが、人類の未来のためだと改めて思う。
未だに15万人が自宅に戻れない地域の人々、今なお、一触即発の危険を抱えながら、壊れた施設にも近づけない現場の状況、そこで働く労働者の被曝、10万年レベルで管理しなければならない使用済み核燃料、処理に困る廃棄物…。汚染水が海に流れ出していることも分かった。何をとっても、解決していない東電福島第1原発のいまを考えれば、「再稼働」ということにはならないはずの原発がなぜ、こんなに、推進されているのか?
安倍政権は「成長戦略」に「原発の活用」を入れ、推進に力点を置いている。規制委員会が認めた原発について、「地元自治体の理解が得られるよう最大限努力する」とした。50基に及ぶ全国の原発は、現在は関西電力大飯原発の2基が動いているだけだが、7月8日、新しい規制基準がスタートしたのを受けて、北海道、関西、四国、九州の4電力が6原発12基を再稼働させるための審査を申請した。
民主党政権は「2030年代に原発稼働ゼロ」という目標を掲げた。今回の選挙でも、与党の公明党が「可能な限り速やかに原発ゼロを目指す」とし、日本維新の会も「原発は30年代までにフェードアウトする」としたが、「再稼働」は否定していない。みんなの党は「30年代までに原発ゼロ」、新党大地も「原発ゼロ」だった。再稼働を認めず、脱原発を訴えているのは、共産党、生活の党、社民党、みどりの風。このグループで、議席を増やしたのは、共産党だけだった。
東京選挙区では、毎週官邸前の行動に参加し、脱原発を訴えてきた共産党の吉良佳子さんと無所属の山本太郎さんが当選した。「政治は変えられる。皆さんと一緒に政治を変える」と吉良さんが語り、「当選を喜んでいる状況ではない」と山本さんは語っている。
原爆の危険性、核戦争の危険性を広げるのには「ヒロシマ、ナガサキの実相」を伝えることが大事だった。原発も同じだ。福島の実相を伝え、原発がいかに非人道的、非道徳的であるかを伝えよう。それが、人類の未来のためだと改めて思う。
丸山重威(日本ジャーナリスト会議)
2013/07/25(Wed) 15:56 | コラム | 2
原発事故から2年4か月、避難者はいま
福島第一原発の事故から2年4か月余りが経過した。まだかなりの人びとが避難をしている状態にある。避難を余儀なくされた人びとのうち、その多くが福島県内にとどまっている一方で、少なくない数の人びとが、近隣の他県や関東地方などをはじめ、全国各地に分散する形で、広域の避難をしている。これに加え、避難命令などが発令されてはいないが、放射能汚染の状況を考慮し、避難している、いわゆる自主避難の人びとがいる。
こうした避難者の状況については、事故への社会の関心が薄れていく中で、必ずしも十分に広く伝えられることが少なくなっているのではないだろうか。仮設住宅などには、折にふれ、マスコミの目にふれることもあるが、都市部の普通の住宅に埋没している、いわゆるみなし仮設の住人については、あまり知られる機会が多くないように感じる。
このような状況の中で、広域避難、それも都市部にいる、被災者の実情を把握しようと、東京と埼玉にいる人たちを対象に、事故から2年を機に、アンケート調査を、支援団体が実施した。筆者もその活動に参加する震災支援ネットワーク埼玉と東京災害支援ネットが行い、埼玉については、昨年に引き続いての調査であり、東京は初めてであったが、いわゆる強制避難者だけではなく、できるだけ自主避難者の声も集めようと試みた。
まだ十分に、その結果を分析することができてはいないのだが、相変わらず避難者の多くがメンタル的に困難を抱え、家族も分断され、将来の見通しも立たず、経済的にも厳しい状況が浮かび上がってきた。損害賠償についても、東電の補償額が少ない中で、不十分であるとの認識や、不安を抱えながらも、多くが賠償請求をし、一定程度ADRも活用されている。数はまだ少ないのだが、訴訟にふみきったケースもあって、注意を引く。
総じて被災者の状態は困難を抱えてはいるが、その中でも、個人差や多様化がみられるようにもなってきた。依然として立ち上がることにハードルが高いと感じる人がいる一方で、心理的に多大な負荷を内在させつつも、状況への適応と、そこから能動的に自らの声をあげることの重要性を意識し始めている人びとの存在が見えてきた。
これらの事柄から、避難者についてステレオタイプで語ることが、どれだけ難しいことであるのか、また、それがどのような問題性をはらんでいるのかが明らかになるだろう。それと同時に、被災者のニーズを考えるなら、個別的で細やかな柔軟性が求められることも理解できるだろう。事故から2年を機に、事態は変化しつつある。
なお、調査の詳細について、7月27日(土)午後1時30分より、東京・西早稲田の早稲田大学で、調査を行った両団体によるシンポジウムで報告の予定。詳細については、震災ネットワーク埼玉のホームページなどを参照。
こうした避難者の状況については、事故への社会の関心が薄れていく中で、必ずしも十分に広く伝えられることが少なくなっているのではないだろうか。仮設住宅などには、折にふれ、マスコミの目にふれることもあるが、都市部の普通の住宅に埋没している、いわゆるみなし仮設の住人については、あまり知られる機会が多くないように感じる。
このような状況の中で、広域避難、それも都市部にいる、被災者の実情を把握しようと、東京と埼玉にいる人たちを対象に、事故から2年を機に、アンケート調査を、支援団体が実施した。筆者もその活動に参加する震災支援ネットワーク埼玉と東京災害支援ネットが行い、埼玉については、昨年に引き続いての調査であり、東京は初めてであったが、いわゆる強制避難者だけではなく、できるだけ自主避難者の声も集めようと試みた。
まだ十分に、その結果を分析することができてはいないのだが、相変わらず避難者の多くがメンタル的に困難を抱え、家族も分断され、将来の見通しも立たず、経済的にも厳しい状況が浮かび上がってきた。損害賠償についても、東電の補償額が少ない中で、不十分であるとの認識や、不安を抱えながらも、多くが賠償請求をし、一定程度ADRも活用されている。数はまだ少ないのだが、訴訟にふみきったケースもあって、注意を引く。
総じて被災者の状態は困難を抱えてはいるが、その中でも、個人差や多様化がみられるようにもなってきた。依然として立ち上がることにハードルが高いと感じる人がいる一方で、心理的に多大な負荷を内在させつつも、状況への適応と、そこから能動的に自らの声をあげることの重要性を意識し始めている人びとの存在が見えてきた。
これらの事柄から、避難者についてステレオタイプで語ることが、どれだけ難しいことであるのか、また、それがどのような問題性をはらんでいるのかが明らかになるだろう。それと同時に、被災者のニーズを考えるなら、個別的で細やかな柔軟性が求められることも理解できるだろう。事故から2年を機に、事態は変化しつつある。
なお、調査の詳細について、7月27日(土)午後1時30分より、東京・西早稲田の早稲田大学で、調査を行った両団体によるシンポジウムで報告の予定。詳細については、震災ネットワーク埼玉のホームページなどを参照。
丸山重威(日本ジャーナリスト会議)
2013/07/16(火) 11:48 | コラム | 1
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こうした避難者の状況については、事故への社会の関心が薄れていく中で、必ずしも十分に広く伝えられることが少なくなっているのではないだろうか。仮設住宅などには、折にふれ、マスコミの目にふれることもあるが、都市部の普通の住宅に埋没している、いわゆるみなし仮設の住人については、あまり知られる機会が多くないように感じる。
このような状況の中で、広域避難、それも都市部にいる、被災者の実情を把握しようと、東京と埼玉にいる人たちを対象に、事故から2年を機に、アンケート調査を、支援団体が実施した。筆者もその活動に参加する震災支援ネットワーク埼玉と東京災害支援ネットが行い、埼玉については、昨年に引き続いての調査であり、東京は初めてであったが、いわゆる強制避難者だけではなく、できるだけ自主避難者の声も集めようと試みた。
まだ十分に、その結果を分析することができてはいないのだが、相変わらず避難者の多くがメンタル的に困難を抱え、家族も分断され、将来の見通しも立たず、経済的にも厳しい状況が浮かび上がってきた。損害賠償についても、東電の補償額が少ない中で、不十分であるとの認識や、不安を抱えながらも、多くが賠償請求をし、一定程度ADRも活用されている。数はまだ少ないのだが、訴訟にふみきったケースもあって、注意を引く。
総じて被災者の状態は困難を抱えてはいるが、その中でも、個人差や多様化がみられるようにもなってきた。依然として立ち上がることにハードルが高いと感じる人がいる一方で、心理的に多大な負荷を内在させつつも、状況への適応と、そこから能動的に自らの声をあげることの重要性を意識し始めている人びとの存在が見えてきた。
これらの事柄から、避難者についてステレオタイプで語ることが、どれだけ難しいことであるのか、また、それがどのような問題性をはらんでいるのかが明らかになるだろう。それと同時に、被災者のニーズを考えるなら、個別的で細やかな柔軟性が求められることも理解できるだろう。事故から2年を機に、事態は変化しつつある。
なお、調査の詳細について、7月27日(土)午後1時30分より、東京・西早稲田の早稲田大学で、調査を行った両団体によるシンポジウムで報告の予定。詳細については、震災ネットワーク埼玉のホームページなどを参照。