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カレンダー月次記事 (2014年08月分)

「人類は核と共存できない 核兵器も原発もない世界を求めるための一視座」

問題意識

 現在、地球上には、1万7千発を超える核兵器と426基の原発が存在している。私は、この核兵器と原発をなくしたいと考えている。「核兵器と原発は同根であり、人類の天敵です。」という意見に同意するからである。そして、私は、核兵器も原発もなくすことはできると確信している。なぜなら、これらの物は、人間が作ったものであり、人間が使用するものだからである。人間の意思と行動で廃棄することは可能である。政治的意思を形成し、物理的に破壊すればいいのである(言うだけであれば簡単である)。そこで、問題はどのように廃絶するかである。
 現在、国際的にも国内的にも核兵器と原発に固執する勢力が支配的である。核兵器を禁止しようとする国際的潮流は大きくなっているけれど、核兵器国の抵抗が強く、まだ、明文の核兵器条約は存在しない。
 核不拡散条約(NPT)は、非核兵器国の核兵器保有を禁止しているが、核の「平和利用」は加盟国の「奪いえない権利」としている。現行国際法のもとでは、核エネルギーの平和利用は、権利であるとされているのである。また、原子力事故に関する諸条約(通報条約や援助条約)はあるが、本質的危険性は法的規制の対象とはされていない。
 究極の暴力と利潤追求の衝動が優越しているのである。これが世界の現実である。核兵器や原発との決別を希求する者は、この支配層の意思を転換し、新たな法的枠組みを形成しなければならないのである。
 そして、我が国政府も、核兵器に依存し、核兵器使用を排除していない。また、放射線の人体に対する影響は過小評価している(後で述べる)。加えて、原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付けている。
 我が国政府は、兵器としてもエネルギー源としても、核エネルギーに依拠し続けることを国策としているのである。米国の核抑止力への依存と矛盾しない範囲で、非核三原則の遵守をいい、核兵器廃絶を唱えてはいるが、その実態は核兵器依存国なのである。加えて、原発の再稼働を急ぐだけではなく、原発の輸出まで進めているのである。政府は、核兵器を国家安全保障の「切り札」、原発を経済活動の主役にしているといえよう。
 この国策の転換をしなければならない。
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 そのための思想と運動が求められている。そこで、ここでは、第一に1963年の「原爆裁判」の判決を、第二にいくつもの勝訴判決を得てきた「原爆症認定集団訴訟」を、第三に今年5月の大飯原発裁判の判決を例にとりながら、現在通有している論理と体制との対抗軸を概観してみるこことする。
 なぜ、これらの裁判例を参照するかといえば、「原爆裁判」は原爆投下の違法性を確認し、「原爆症認定手段訴訟」は放射能被害を認定し、「大飯原発判決」は原発再稼働を認めていないからである。そこには、現在の支配的価値と論理、すなわち、国家の暴力と資本の衝動を否定する判断がなされているのである。これらの裁判例に通底する価値と論理を探求してみたい。
※ 以下は、下記リンクよりPDFをダウンロードしていただきたい。
核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会事務局長
弁護士 大久保賢一

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2014/08/22(Fri) 11:41  |   コラム  |   20