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カレンダー日次記事 (2013年07月16日(火))

原発事故から2年4か月、避難者はいま

 福島第一原発の事故から2年4か月余りが経過した。まだかなりの人びとが避難をしている状態にある。避難を余儀なくされた人びとのうち、その多くが福島県内にとどまっている一方で、少なくない数の人びとが、近隣の他県や関東地方などをはじめ、全国各地に分散する形で、広域の避難をしている。これに加え、避難命令などが発令されてはいないが、放射能汚染の状況を考慮し、避難している、いわゆる自主避難の人びとがいる。
 こうした避難者の状況については、事故への社会の関心が薄れていく中で、必ずしも十分に広く伝えられることが少なくなっているのではないだろうか。仮設住宅などには、折にふれ、マスコミの目にふれることもあるが、都市部の普通の住宅に埋没している、いわゆるみなし仮設の住人については、あまり知られる機会が多くないように感じる。
 このような状況の中で、広域避難、それも都市部にいる、被災者の実情を把握しようと、東京と埼玉にいる人たちを対象に、事故から2年を機に、アンケート調査を、支援団体が実施した。筆者もその活動に参加する震災支援ネットワーク埼玉と東京災害支援ネットが行い、埼玉については、昨年に引き続いての調査であり、東京は初めてであったが、いわゆる強制避難者だけではなく、できるだけ自主避難者の声も集めようと試みた。
 まだ十分に、その結果を分析することができてはいないのだが、相変わらず避難者の多くがメンタル的に困難を抱え、家族も分断され、将来の見通しも立たず、経済的にも厳しい状況が浮かび上がってきた。損害賠償についても、東電の補償額が少ない中で、不十分であるとの認識や、不安を抱えながらも、多くが賠償請求をし、一定程度ADRも活用されている。数はまだ少ないのだが、訴訟にふみきったケースもあって、注意を引く。
 総じて被災者の状態は困難を抱えてはいるが、その中でも、個人差や多様化がみられるようにもなってきた。依然として立ち上がることにハードルが高いと感じる人がいる一方で、心理的に多大な負荷を内在させつつも、状況への適応と、そこから能動的に自らの声をあげることの重要性を意識し始めている人びとの存在が見えてきた。
 これらの事柄から、避難者についてステレオタイプで語ることが、どれだけ難しいことであるのか、また、それがどのような問題性をはらんでいるのかが明らかになるだろう。それと同時に、被災者のニーズを考えるなら、個別的で細やかな柔軟性が求められることも理解できるだろう。事故から2年を機に、事態は変化しつつある。
 なお、調査の詳細について、7月27日(土)午後1時30分より、東京・西早稲田の早稲田大学で、調査を行った両団体によるシンポジウムで報告の予定。詳細については、震災ネットワーク埼玉のホームページなどを参照。
丸山重威(日本ジャーナリスト会議)
2013/07/16(火) 11:48  |   コラム  |   1

原発事故から2年4か月、避難者はいま

 福島第一原発の事故から2年4か月余りが経過した。まだかなりの人びとが避難をしている状態にある。避難を余儀なくされた人びとのうち、その多くが福島県内にとどまっている一方で、少なくない数の人びとが、近隣の他県や関東地方などをはじめ、全国各地に分散する形で、広域の避難をしている。これに加え、避難命令などが発令されてはいないが、放射能汚染の状況を考慮し、避難している、いわゆる自主避難の人びとがいる。
 こうした避難者の状況については、事故への社会の関心が薄れていく中で、必ずしも十分に広く伝えられることが少なくなっているのではないだろうか。仮設住宅などには、折にふれ、マスコミの目にふれることもあるが、都市部の普通の住宅に埋没している、いわゆるみなし仮設の住人については、あまり知られる機会が多くないように感じる。
 このような状況の中で、広域避難、それも都市部にいる、被災者の実情を把握しようと、東京と埼玉にいる人たちを対象に、事故から2年を機に、アンケート調査を、支援団体が実施した。筆者もその活動に参加する震災支援ネットワーク埼玉と東京災害支援ネットが行い、埼玉については、昨年に引き続いての調査であり、東京は初めてであったが、いわゆる強制避難者だけではなく、できるだけ自主避難者の声も集めようと試みた。
 まだ十分に、その結果を分析することができてはいないのだが、相変わらず避難者の多くがメンタル的に困難を抱え、家族も分断され、将来の見通しも立たず、経済的にも厳しい状況が浮かび上がってきた。損害賠償についても、東電の補償額が少ない中で、不十分であるとの認識や、不安を抱えながらも、多くが賠償請求をし、一定程度ADRも活用されている。数はまだ少ないのだが、訴訟にふみきったケースもあって、注意を引く。
 総じて被災者の状態は困難を抱えてはいるが、その中でも、個人差や多様化がみられるようにもなってきた。依然として立ち上がることにハードルが高いと感じる人がいる一方で、心理的に多大な負荷を内在させつつも、状況への適応と、そこから能動的に自らの声をあげることの重要性を意識し始めている人びとの存在が見えてきた。
 これらの事柄から、避難者についてステレオタイプで語ることが、どれだけ難しいことであるのか、また、それがどのような問題性をはらんでいるのかが明らかになるだろう。それと同時に、被災者のニーズを考えるなら、個別的で細やかな柔軟性が求められることも理解できるだろう。事故から2年を機に、事態は変化しつつある。
 なお、調査の詳細について、7月27日(土)午後1時30分より、東京・西早稲田の早稲田大学で、調査を行った両団体によるシンポジウムで報告の予定。詳細については、震災ネットワーク埼玉のホームページなどを参照。
丸山重威(日本ジャーナリスト会議)
2013/07/16(火) 11:48  |   コラム  |   1